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かなり経験者の生徒さんへの指導例(構図や自分の表現について)


 

 

すこし前になりますが、別の絵画教室で色鉛筆を学んでいた生徒さんが入会されました。

過去に描いた作品を拝見するとかなり力がある印象でした。

上の画像は、以前の教室で描き途中だった作品で、「アトリエもりのさと」でこの続きをしています。

また、今までは基本的に道具を含め、全て先生の指示通りに描いたとのことでしたが、画像の作品は初めて自分でモチーフを選んだというお話がありました。

 

 

 

 

 


構図の問題


 

 

繊細に描いている反面、描き途中の作品を見て思ったことは、構図が決まっていない(やりたいことが画面上でまとまっていない)という印象でした。

構図の話は複雑なので割愛しますが、具体的には画面縦の上2/3と下1/3で、別の構図に見える(やりたいことが2つある)ということです。

ちなみに画面の狙いが優先順位がなく、同じぐらい2つあることは基本的によくありません。

というのも、じっくり見たい場合のその両方に目線が行ったり来たりするので、集中して作品をみることが難しくなるからです。

要するに、どっちつかずという状況です。

 

画面縦の上2/3の場合はメインのアジサイ微妙な変化を描くことが狙いに見えます。

下1/3はメインのアジサイと画面したのアジサイの間の光がテーマに見えます。

このことを生徒さんに話したところ、興味深い反応がありました。

 

それは画面縦の下1/4は以前の教室の先生のアドバイスで元々の構図を変更したとのことでした(元々は地面が写っている写真を参考にしていたようです)。 

おそらく、以前の教室の先生は上で書いたような画面の奥からの光がメインになることを想定してアドバイスをされたと考えますが、生徒さんが描きたいものは飽くまでアジサイだったので、そこで構図の問題が起きていたことが考えられます。

 

 

 

 

 


【ポイント】作品の主役(主題)と脇役を決めることは大切


絵に限らず、主役(主題)を決めることや、目的に対して優先順位をつけることはとても大切です。

私が予備校時代に「『この作品のテーマを一言でいうと何か?』を答えられるようにしなさい」という話を何度も聞きましたが、これがはっきり答えられる場合は、基本的に優先順位がしっかりしています。

 

これは、今回の生徒さんの話した例え話ですが、例えば、時代劇の「暴れん坊将軍」があります(今の若い子に伝わるか心配ですが)。

ドラマの終盤で、その暴れん坊将軍(徳川吉宗)が悪党と戦う殺陣があります。

軽快なBGMと共に吉宗がバッサバッサと悪党を切っていく爽快感があるのですが、例えば、悪党の明らかにボスではない脇役がずっと切られずに戦い続けていたいたらどうでしょう?

もの凄くドラマのテンポが悪くなるし「やけに強いけど、そもそもお前誰?」という感じになると思います。

切られる役には、さっと切られて画面外に消え、また違う人として画面に現れ、切られるという役割と技術があります。

そうすることで、主役がより目立つようにしているわけですね。

授業時になんで時代劇の例え話が浮かんだのか(私は別に見ないので)謎ですが、こういうことです。

 

 

 


画面上で出来るだけリスクをとらないアプローチ



 

話を戻します。

作品がかなり完成に近づいていたので、なるべく画面が壊れないようなローリスクのアプローチを試しました。

具体的には、まず画面の明暗の差(コントラスト)が強いため、逆行の光の印象も強かったので、背景に色塗ってコントラスを抑えました。

また、実際の画面に描く前に小さくコピーしたものに試しで描いてみました。

こういう方法はプロであれば普通のことですが、完成度を上げることが目的の画面の場合、画面上であれこれ試して失敗してしまうのは不味いです。

特に、今回の色鉛筆などはは後々修正が難しいので、画面上で安易に試さないで画面外で試行錯誤しましょう。

 

結果として、それでも逆行の印象が強かったので最終的に画面を切ることにしました。

 

 

 

 

 

画面の下の方を切った状態が上の画像で、画面奥から見える光の表現の、面積が減り、元々生徒さんが見せたかったアジサイにしっかり目がいくようになりました。

本人も画面を切った方が良かったと納得していました。

ちなみに描き途中で画面を切るときには、最初から理想の位置で切らないで余裕をもって数回手前で切り、その切った画面を見ながら調整すると失敗の可能性が低くなります。

 

今回の生徒さんの場合は、技術があるので後は自主的に決める力が身に付くとより自由な表現ができます。

画材に関しても今は、自分に合ったものをいろいろ試していて楽しいというお話がありました。

「アトリエもりのさと」の場合、こちらの生徒さんのこのような指導で進めています。