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しっかり技術(基礎)を身につけるためのデッサンを始める上で覚悟してほしいこと<デッサンが難しいと感じる理由>


<講師の予備校時代のかなりオーソドックスに描いたデッサン>

 

 

アトリエもりのさとはデッサンの授業を希望する方がとても多いです。

デッサンは、イラストなども含め、色彩を扱う上でも役に立ち、絵を描く上で全てに応用できる基礎になります。

また、道具も安価で、教本などいろいろあるので手軽に始められます。

その半面、教室にデッサンが習いに来る人が多いということは、1から自分で始めることが難しいとも言えるでしょう。

今回は、なぜデッサンを身につけることが難しいかを書きたいと思います。

ちなみに、かなり長文です(笑)

 

また、「基礎や技術とは自由に描き、表現するため手段」であることが大前提です。

 

 

 

 

 


 

今回のブログのタイトルを少し言い換えると、

一般的な方がイメージする絵を描くことと、「デッサン」をしっかり身につける場合のギャップについてとなります。

モチーフによって多少は変わりますが、一般的なイメージの「感覚的に表現する、描く」という感じで進めるとデッサンを描くことは、実は難しいです。

また、独学で絵や、特にイラストを描く力がある人は感覚に頼りがちです。

むしろ、しっかりデッサンを身につけるには、自分の感性、感覚ではなく「現実がどうなっているか」を見つめる(認める)ことが大切になります。

そして、それは「基本的に本人にとって都合が悪い現実」なので、それを受け入れなければなりません。

それが出来れば、物を自然に描く程度のレベルであれば、感性などに関係なく、基本的に誰でも描けるようになるということです。

感性的なものは、デッサンの描く力が身についてることが、前提の「表現力」と考えてもらっていいと思います。

 

そのようなことで、身につけるのは大変です。

よく生徒さんに、「デッサンは筋トレのように地味なわりに大変で、正直な話、他の技法よりつまらない」という話をします。

しかし、表現のレベルが高くなればなるほど、そこからは逃れられないと思います。

また、身につけることが出来れば、絵を描くときに、どんな物やどんな技法(PCを含め)にでも役立ち、スムーズに新しい技法でも挑戦できるでしょう。

 

 

 

 


デッサンの(おおまかな)3つの要素:形、陰影、鉛筆


デッサンに限らず、絵を描く上では、複数の技術があり、その全てが要求されます。

デッサンであれば3つの要素におおまかに分けられると講師は考えます。

 

「形」 形を観察して描く力。

「陰影」 物の陰影(光の変化)を描く力。 

「鉛筆」 鉛筆を使う技術力。

 

この要素はそれぞれ関係もしていますが、基本的に別々と考えるべきです。

初心者で上手くいかない、デッサンが難しいと感じるのは、この要素をいっぺんにやろうとすることが大きな原因と言えるでしょう。

オススメとしては、上記の中で苦手、興味が無い要素はとりあえずやらないということです。

 

 

 

 


「形、陰影、鉛筆」の要素を分けて扱うという提案


 

上記の「苦手、興味のない要素をやらない」というのは、具体的にどういうことか具体的に答えます。

例えば、教室のブログでも提案していますが、とりあえず形を描くことを置いておく場合は、写真などをトレースするという方法もあります。

言い換えると、陰影の塗り絵をするともいえます。

そうすることで、陰影を描くことと、鉛筆を扱う技術に集中出来る訳です。

 

また、鉛筆は描画材の中でも差が非常に出にくく、描くに時間がかかります。

デッサンはこの鉛筆(と紙)を扱う技術でもあります。

鉛筆を扱わない場合は、パステルで描いてみると大まかな陰影など広い面が簡単に塗れます。

具体的にはこちらのブログに少し書いています。

 

 

 

 


描く上での精神面(考え方)の問題とポイント


 

私が見た中で感じたデッサンの入門書の気になったのは技術面の問題だけで、精神的や頭の使い方の問題があまり書かれていないことです。

そこが抜けているので、読んでも分からない、伝わらないということがあると考えます。

また、入門書を書いている人はおそらく、元々小さいときから絵が上手い人が多いのだと思います。

なぜ、そう思うかというと、かなりの説明の部分が省略されていたり、

「いきなりその方法で描けるならば、その人はもう初心者じゃないよね?」と感じることが非常に多いからです。

 

具体な話を、だ円の補助線の描き方で説明します。

 

 

<いろいろな補助線の描き方>

 

 

形を描くための基準として補助線を書きますが、この補助線が少なければ少ないほど、

また、垂直水平の角度が明確でないものほど、描く人の感覚や能力が必要になります。

 

なぜか、ほとんどの教本は、この補助線をフリーハンドで描くことが前提です。

個人的には「え?このくらいの補助線で後は感覚で描けないの?」と言われるようで、非常にひっかかります。

それが出来れば初心者は苦労しないです。

 

教室で教えている方法は、上の画像の「紙定規 十字と枠」という描き方です。

ちなみに「紙定規」はそういうものがある訳ではなく、普通の紙を定規代わりに線を描いているだけです。

具体的には下の画像のようにして使います。

 

しかし、この描き方は一見すると面倒なので、特にイラスト等の絵が元々得意な人ほど、説明をちゃんとやりません(笑)

そして、形が描けなくてドツボにはまりやすいです。

自分の感覚でやると、客観的かわからないので正確かどうか結局わかりません。

この製図的な描き方は一見すると面倒なのですが、明確な客観的な基準があるので、実は描き終わるスピードとしては早くなります。

 

まさに急がば回れです。

 

 

 

 

<紙を定規代わりにして線を描く方法> 

 

 

 

そんな中、このブログの書き途中に教本を改めて調べていたところ、良さそうな本を見つけました。

『はじめてのデッサン教室 60秒右脳ドローイングで絵が感動的にうまくなる!』という本です。

デッサンは細部などもしっかり描き込むので、最低でも5時間はくらいは描いてもらいたいです。

特に仕上げの段階が難しいので、その練習をするためにこのくらいの時間が必要になります。

 

こちらの本の場合は、細部の描き込みはとりあえず置いておいて、短時間で、大まかな形や陰影をつかむことを狙いとしています。

また、「右脳ドローイング」とあるように、どのような点を意識するかなどの考え方が、シンプルにわかりやすく書いてあります。

最初から長時間のデッサンをするのはハードルが高い場合は、この本のように「短時間である程度描く要素を絞る」と手軽に始められるでしょう。

 

上達するためには、やはり継続できることが一番大切なので、最初はできるだけ自分の興味があることに絞ってやってみましょう。

 

 


「形を観察して描く」には、自分にとって都合の悪い現実を受け入れる必要がある


 

前置きが長くなりましたが、冒頭の『「形を観察して描く」には、自分にとって都合の悪い現実を受け入れる必要がある』について話します。

教室でデッサンの授業を希望する方にはまず、立方体を描いてもらいます。

立方体は全ての形の基本と言えるもので、例えば、「マインクラフト」というゲームは基本的に全て立方体のブロックで3次元の空間を作っています。

イメージとしては、この立方体の角を削っていくといろいろな形になるわけです。

 

 

  

 

立方体は、一見簡単そうなのですが、最初は苦労するモチーフです。

それは、イラストが得意で人物などが上手い人でも大体同じです。

ちなみに、何に苦労するかというと、立方体の形をとることです。

案外、陰影についてはスムーズにいきます。

 

立方体に限らず、工業製品には厳密な規格があります。

当たり前ですが、その日の気分で形が変わってしまうと、まずいわけです。

これを、最初から感覚的に任せて形をとろうとすると、中々正確にとれません。

なぜかは、最近のブログで詳しく書いたので省略しますが、人間の目というものは当てにならないもので、

普段は私達は自分の都合のいいように、視覚情報を観念的に置き換えて情報量を減らしています。

言い換えると、普段人は目で「物を見えている」のではなく「映している」といっていいでしょう。

そうやって脳のリソースを軽くしています。

 

そのような状態なので、自分の感性が入らない、客観的な基準がないと、なかなか実際のものを「見る」ことができません。

例えば、そのために、モチーフの比率や角度を測るための「はかり棒」などを使用します。

 それらを使って、自分が見ている(ここでは「映している」という意味)物と実際(現実)はどうなっているかの違いを認識することが、

ブログの最初の方で書いた、デッサンの3つの要素の中の「形を観察して描く力」になります。

 

 

 

 

 


デッサン的な基礎が苦手でリアリティがなかった講師だからこそ思う基礎の大切さ


講師は、子供のときは絵は得意でしたが、中学生からは美術の授業外で自主的に描くということは、全くありませんでした。

高校までは運動部で、美大用の予備校に入ったのは高校3年生の3学期からです。

浪人生になったときに、他の人は短くても1年は絵の勉強をしているため、私は本当に一番下手で、技術もないところからスタートしました。

また、不器用かつ、いわゆる「受験に受かるための形の絵」を描きたくなかったので、苦労しました。

そこで苦労した経験や、多くの実験と失敗が、今の人に教える立場として非常に役に立っていると思います。

 

下に講師の過去の作品(基礎が身についた後)を載せますが、表現方法がオーソドックではありません。

自分の体質に合うような表現をしているので、このような表現が出来ない、基準が分からないという人も多いと思います。

そんな作品を描く私は、オーソドックスに描くのが実は一番苦手で、デッサン的な基礎(特に自然に描くこと)が苦手でした。

しかし、自分の表現が客観的に見て形になってきたのは、その基礎が身についたときでした。

 

 

やはり、表現したいことがあってもそのための表現方法(基礎や技術)がないと、それを現実化出来ませし、人に伝わりません。

講師の場合、やりかった自分なりの表現は、様々な質感の違いなどの要素が入った表現だったので、

それらを理解することと、それをまとめるためにデッサン的な基礎が必要でした。

 

このことは、細密描写やオーソドックスな表現、保守的な表現をする人の場合は基礎の大切にする人は多いと思います。

私の場合は、表現としてはその逆ですが、いろいろやってきた結果、結局デッサン的な基礎力が必要なことを実感しました。

 

「自由」と「好き勝手」は違います。

「自由」とは、特定の領域(ルール)を自分でつくり、あくまでその中で自由ということだと講師は考えます。

そして、「基礎や技術とは自由に描き、表現するため手段」ということも忘れてはいけない大切なことです。

 

 

アトリエもりのさとは、あなたの自由な表現をするために必要な基礎や、技術を身につけるためのサポートしていきたいと思います。

 

 

 


<講師の予備校時代(技術がしっかり身についた頃)の作品:1,2枚目デッサン、3枚目水彩>

 

<大学学部時代の古典技法(テンペラ)実習 左:描いたもの、右:元にした雑誌のコラージュ>

デッサンではないですが、考え方としては基礎的な表現といっていいでしょう。

 

<大学学部時代の作品>

 

<大学学部時代の作品>