<画像A>
かなり前に「趣味や初心者向けの絵画の展示方法(キャプション<題名などが書いてある紙>編)」というブログを書いたのですが今でもページのアクセス数が多く驚いています。
たしかに、キャプションの書き方って誰も教えてくれないのでよく分からないと思います。
講師自身も美大生時代に美術館やギャラリーのキャプションをいろいろ見て書き方を学びました。
そのようなことで、今回はその続きで作品を壁にどう展示するかの基本を書きたいと思います。
どんなに良い作品でも展示の仕方が悪いと作品の世界に入って行けなかったり素通りされたりします。
特に趣味で展示している方などは基本を知っていると展示のクオリティが1段上がると思います。
ちなみに、画像の黄色い四角が作品で水色の小さい四角がキャプション(題名などが書いてある紙)になります。
<画像B>
まず、<画像B>の上の方の問題点は以下になります。
①作品が水平に展示されていない。
作品がちゃんと水平に展示されていないと「あれ?なんか傾いてるな」と鑑賞者が思ってしまい作品の内容に入りづらくなります。
どんなに良い作品でもこれはもったいないですし、本当に最低限にしなくてはならないことです。
水平器などを使ってしっかり測りましょう。
ちなみに最近はスマホのアプリでも水平器の機能があります。
また、大きい作品の場合は長めの水平器があると安心です。
②作品やキャプションの中心がバラバラ
これは結構やっている人がいそうな気がします。
作品を並べるときに中心揃えか、上揃え、下揃え迷う方がいると思いますが中心揃えにしましょう。
中心揃えだと目線が常に一定になります。
目線が上下してしまうと見づらくなり集中力もなくなってしまいます。
ちなみに、高さの中心線は「床から140cm~145cm」が1つの基準になると思います。
ただし、鑑賞者が子供など身長が低い方がほとんどの場合はもう少し下げるなどの対応をしても良い思います。
キャプションも中心を揃え、作品対しての距離も同じだと落ち着いて見えます。
また、キャプションのサイズやフォント、書式が変わるとゴチャゴチャするので必ず統一しましょう。
あと、極端に大きい作品と小さい作品が並ぶ場合はどちらか少ない作品のキャプションの位置だけずらした方が見やすい場合もあります。
③キャプションが作品の中心に貼ってある。
これも趣味の展示で結構見かけるような気がしますが良い方法ではありません。
キャプションは作品ではないので目立つところにあると作品に集中ができません。
出来るだけ作品を見るときに邪魔にならない(目立たない)場所に貼りましょう。
基本的には作品右に貼ると思います。
また、左右どちらの作品のキャプションか分かるように作品の間のスペースの真ん中に貼らないで寄せましょう。
④作品の間隔は基本的には均等にする。
基本的に作品の間隔が一定でないと展示が綺麗に見えません。
ミリ単位まで厳密にする必要はないと思いますが、壁と作品の幅を計算して一定の間隔になるようにしましょう。
ただし、壁の両端など建物の構造や、派手な作品と地味の作品が隣り合うなどの場合、極端に大きい作品と小さい作品が隣り合うなどの場合は、必ずしも一定にしたほうがいいとも限りません。
均等な間隔は基準なので、一度やってみてから見え方がよくない場合などは臨機応変に微調整しましょう。
また、1人で決めると主観的になりやすいので出来るだけ他の人にも見え方の感想を聞きながらを決めていきましょう。
↓長さはメジャーで測りましょう。展示会場が広い場合5Mぐらいのメジャーがあると便利です。
<画像C>
次は<画像C>のついて説明します。
⑤派手な作品と地味な作品がある場合は出来るだけ離したり分けて展示をする。
地味な作品や淡く繊細な作品などは派手な作品が近くにあるとその繊細さが食われてしまうことがよくあります。
そのようなことで派手な作品と地味な作品はなるべく作品の間の距離をとったり、複数の壁があったら壁単位で分けると見やすくなります。
逆に派手な絵の場合は周りの絵がどんな状況でも比較的見やすいので地味めな絵基準で考えると良いと思います。
⑥意図がなければ大きさ順に作品を並べない
作品を大きさ順に並べると階段のようなリズムが見えてしまいます。
作品単体で見せたい場合、このリズムは邪魔になります。
理由としてこのリズムは「複数の作品の関係性」から出てくるものだからです。
こうなってしまうと無意識的なことも含めて1つのグループとして関連して伝わってしまいます。
これは本人が意図するしないに関わらず「この配置をしてしまうとそう見えてしまう」ので注意をしましょう。
<画像D>
最後に<画像D>のついての説明です。
⑦出来るだけ作品の間はあける
特に趣味でのグループ展などでは物理的に難しいかもしれませんが作品の間はなるべくあけましょう。
間が狭すぎると作品を見ていても他の作品が視界に入ってきて集中しづらくなります。
また、個展など自分の作品を複数点が出来る場合は無理やり全てを展示しないほうが見栄えがいいです。
実際私も作家として展示をする場合で作品数が多い場合は展示をしてみて見づらくなるものは展示をしないことがあります。
プロの視点としては足し算より引き算が基本になります。
また、基本的に作品の間のスペースが広いとゆったりと高級な印象になりやすいです。
1つ1つの作品にしっかり集中も出来ます。
ただし、あまりにもスペースを空けすぎると間延びするので注意が必要です。
美術館などを展示を見るときには「作品の間がどのくらいあるか」を見てみると参考になると思います。
・より高度な展示方法例 (2022/10/8追記)
<生徒さんのグループ展の展示風景>
今まではオーソドックスな展示方法を紹介していましたが、特に現代では、あえて展示する作品をいろいろな位置に展示する方法もあります。
イメージとしては、展示する壁を1つの画面のように見立て、その中を作品で構成していく感じです。
こうすることで、作品同士の関連性が出来たり、展示空間自体もリズミカルでより、全体感が増します。
ただし、適当に何となくやるとバランスが悪く見づらい展示になることが非常に多いので、事前に展示スペースにどうやって配置するか、図面などを含め、の下準備が非常に大切です。
こちらの生徒さんも展示前に展示の構成をいろいろと考えていました。
さらに、実際に展示をしてみるとイメージと違うことが多々あるので、その場で臨機応変に対応することも大切になります。
今回はこんな感じで1つ1つの作品が見やすくなる展示方法の基本のお話でした。
ただ、特に現代ではいろいろな展示方法があるので現代作家の作品が展示してある美術館やギャラリーを見に行くといろいろ勉強になると思います。
そのようなことで、展示を見る際には「展示空間がどうなっているか」も意識してみると面白いと思います。