(今回は20代の生徒さんが制作した二次創作漫画をお借りしています)
先日生徒さんが制作した二次創作漫画を見せていただいたときにいろいろと面白い話ができました。
今回の内容は、人物の形の話と「目的に対しての」演出についてです。
教室では初心者向けの話もしていますが今回のようなちょっと難しい内容も生徒さんのレベルに合わせてしていますので参考になればと思います。
ちなみにですがタイトルの「画家」は講師で「アニメーター」は私の姉です。
私の姉は元アニメーターで最近家(教室)に来たので姉にも作品を見てもらいました。
上の画像の左が生徒さんの元の作品で、中央が講師が修正したもの、右が姉に教室のホワイトボードに描いてもらったものです。
まずは講師がどのようなような修正をしたかを具体的に話したいと思います。
ちなみに講師はイラストが基本的に描けません。
なので、講師のアドバイスは「画家が絵画的な視点からこの漫画を見たときに思ったアドバイス」という感じになります。
あまりこのような視点の話はなさそうなので何かの参考になればと思います。
※講師が修正した画像はコピーしたものをスキャン後、編集しているので画質や画面効果がなどが少し違います。
講師が修正した画像についての説明をします。
まず、前に書いたように講師はイラストが描けないので元のデータを切り貼りして修正をしています。
①ポイントは顔の向きと顎先
まず、このコマを見たときに顔の角度に違和感を感じました。
実際は顔がかなり斜めから見たの角度になるのですが、元の作品は顔がほぼ正面を向いてるように見えます。
なぜ顔が斜めから見た角度と言い切れるかは顎先の位置です。
体がこの角度の場合、顔が正面を向くと顎先は首の内側に入ります。
逆に顎先が首から出ている場合は斜めから見た角度となります。
このバランスは実際の人物でもキャラクターでも変わりません。
よくわからない場合は鏡などで確認してみてもいいと思います。
あと、角度をわかりやすくするために帽子の左側の輪郭を少し削りました。
②ポーズや意図に対しての顔の動き
セリフで「エレガントな___」という言葉や体の動きからバレエのように体を反ってより優雅な動きしたほうが良いと思ったので顔が傾いて見えるように両目を繋いだ線が斜めになるようにしました。
元の作品の左右の目はほぼ水平なので比較するとわかると思います。
また、顔のバランスの調整後に顎の輪郭のバランスがちょっと微妙な感じがしたので髪で少し隠しました。
その際に顔の傾きに合うように髪も傾けて動きを出しました。
③人物を簡単に目立たせる
他にも方法はいろいろあるのですが、人物に目が集中するように人物の周りの暗くして明暗の差(コントラスト)をつけました。
元の作品は人物の右側にあるカードの情報量が多くどうしても目線がそちらに流れすぎる印象が強くあったので何かしら調整が必要です。
④カードを「カード」として見せる演出をする、記号性の話(難しめ)
ここの話は中級者以上向けの専門的な話になります。
イラストや漫画、アニメなどで元々別の1枚で描かれたものを今回のようにカードや写真、絵などの「平面として見せる」場合にそのままコピー&ペーストをしているものがあります(といっても講師は漫画やアニメなどはほとんど見ないのですが)。
デジタルだとそれが簡単にできるので便利ですが枠で区切ってあるだけだと情報量が多いので別の空間がそこにあるようにも見えることが講師としては気になっていまして、姉に話してみてもやはり同じような感じでした。
例えば、今回のようなカードであればそれが「カードである」と認識させるための記号性が必要です。
講師が考えた具体例としては、
①線画や塗りを単純化したものを描く=描いている世界とカード(平面)の情報量を変えて描き分けをする。
②カード面を反射させる=「これは平面である」という記号性を使って認識をさせる。
とりあえずこんなことを考えました。
絵画に限らず、漫画、イラスト、アニメなどにも共通して「何を見せたいか」とその優先順位を決めることはとても大切であり基本です。
例えば、人物を大きく自然に入れた画面で人物はあまり描かないで奥に見えるドアのノブを物凄くリアルに描いてもいい絵にはなりません。
人物を大きく自然に画面に入れる=「人物が主役」という構図ではドアノブは補助的なものでなければ邪魔になってしまうからです。
また、イラストなどで食べ物や小物を物凄く緻密に描くプロの方も目にするのですがやはりそれをやりすぎると本来見せたいものの邪魔になってしまいチグハグな画面になってしまいます。
描けるからといって「全てを緻密に描くこと=良い絵」という訳ではなく、目的に対しての抜き差しが大切です。
姉にその話をしたところ、「でも、一般の人には隅から隅まで緻密に描いている方が豪華で上手く見えるんじゃないの?」という話を聞き同意もできるのでなかなか伝えるのが難しいところです。
今度は姉に教室のホワイトボードに描いてもらったものとの比較になります。
イラストが描けない講師としてはその場で描けることに驚きます。
本人も大きな画面で描くことはないので楽しく描いてたようです。
ちなみにカードの絵柄は別の物が描いてあり遊び心があります(笑)
一緒にいろいろ話しながら描いてもらったので基本的に講師と同じようなことを意識して描いてもらっています。
ポイントとしては体の動きと手の大きさです。
出来るだけ体を反ったり、顔を傾けて動きが出るように描いてもらいました。
基本的に動きがないよりもあったほうが画面としてよく見えるので極端にやるぐらいで丁度いいと思います。
手も遠近感が出るように大きめ描いてもらいました(ちなみに実際の比率だとさらに手が大きくなります)
ちなみに右手の小指は開いていたほうがより動きや優雅さがでるので講師が少し修正をしてみました↓
( 小指を修正した画像 )
ということで、今回は生徒さんの描いた漫画について話をしました。
繰り返しになりますが、講師はほとんどイラストが描けませんが「画家としての視点」や「一枚の絵」としてアドバイスすると今回のような話しになります。
今回ご協力頂いた生徒さんに感謝をいたしまして今回のブログの締めとさせていただきます。